「会計監査の在り方に関する懇談会」提言

 確定申告期もどうにか終わったので,3月8日に公表されていた「――会計監査の信頼性確保のために――」と題された提言を読もうかなと考えていたら,タイミングよく,今日の日本系坐新聞社説でもとりあげられていました。

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 社説で気になったのは,監査法人の強制的なローテーション制度について,提言が「金融庁において,深度ある調査・分析がなされるべきである」とまとめたことに対して,「交代制は会社とのなれ合いを防ぐ半面,知識や経験の蓄積が途切れ,監査の質が下がるとの指摘もある。」とした点です。この文章自体,提言の文章を引用したもので,日本経済新聞論説委員の考えではなさそうなのですが,全体として,提言の内容を消化するだけの当たり障りのないものになっているような気がしました。

「会計監査の在り方に関する懇談会」提言の公表について:金融庁

 一方,提言の中で気になった言い回しは,「指摘がある」「指摘されている」というものでした。こうした表現は,提言全体で13か所に及び,提言だけを読む限り,「指摘したのは誰なのか?」という疑問がまったく解消しません。おそらくは,「議事要旨」として公表されている有識者のみなさんのご意見ではないかと推測します(ただし,議事録はすべて匿名です)。ただ,この表現,どうも他人事のような気がして,好きになれません。懇談会としてどう考えるのか,「指摘」を認めるのか否定するのかを明らかにしないと,結局は,両論併記の問題先送り,さらなる検討が必要といったあたりで,議論が終わってしまい,何ら前に進まなかったという結果になるのではないかと考えます。

 そうした筆者の感想は,磯山友幸氏の以下の記事にかなり近いものがあるかもしれません。

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