国税不服審判所は,四半期に1回,約半年遅れで裁決事例を公表しています。通常は月末に公表されるのですが,3月末はなぜか遅れて4月7日になって公開されました。Professin Jounal誌で,公表裁決のうちから,注目される事例を2~3とりあげ,簡単な解説をつける「速報解説」シリーズも,ついに10回目になりました。
国税不服審判所による最近の公表事例の選択の特徴は,やはり,平成23年改正を受けた国税通則法がらみのものが多いという点で,今回は公表9事例のうち3件,前回(平成27年4月~6月分)は17事例中5件を,国税通則法関係のものが占めています。
今回注目事例としてとりあげたものの一つは,所得税の収支内訳書に根拠のない数字を書いて申告をした個人事業主に対する重加算税の賦課決定処分を,国税不服審判所が取り消したものです。
国税不服審判所は,重加算税の要件を次のように述べます。
重加算税を課するためには,納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい,仮装に当たるというだけでは足りず,過少申告行為そのものとは別に,隠ぺい,仮装と評価すべき行為が存在し,これに合わせた過少申告がされたことを要するものである。
そのうえで,
納税者が,当初から所得を過少に申告することを意図し,その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上,その意図に基づく過少申告をしたような場合
に,重加算税の賦課要件が満たされるとしています。
本事例は,「外部からもうかがい得る特段の行動」までは見られないとして,課税処分の取り消しを命じたものでした。
↓ 国税不服審判所のサイトです。