「租税争訟レポート」をProfession Jounal誌に寄稿しました。

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 4月21日,東京高等裁判所で言い渡された「馬券の払戻金の所得区分と外れ馬券の必要経費該当性」をめぐる判決は,原審である東京地方裁判所の判決から一転して納税者勝訴となりました。

 今日公開されたProfession Journal誌には,本件判決について,原審との判断の相違点を比較検討しながら,最高裁判所平成27年3月10日判決を受けて改正された所得税基本通達34-1(一時所得の例示)の注書きについて,あらためて,検討しています。

 通達では,「馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用」,「独自の条件設定と計算式」に基づいて馬券を購入することを前提条件としており,自分自身のノウハウで馬券を購入した者が得た馬券の払戻金については,これまでどおり,「一時所得」に該当することとしており,この点,「営利を目的とする継続的な行為」の条件を馬券の購入方法でもって制限するのはおかしいのではないのか,というのが,通達改正時のパブリックコメントにも寄せられていました。

 本高裁判決は,ソフトウエアを利用せず独自のノウハウで馬券を買い,しかも長期間利益をあげ続けた控訴人の行為は,「営利を目的とする継続的な行為」であると認めたものであり,納得できる判断であると考えます。一方,国税庁は本高裁判決を不服として上告受理申立てを行ったことが伝えられていますが,最高裁判所が,平成27年3月10日判決を覆すとは考えづらいのではないかというのが,小職の結論です。