書籍『不正会計と経営者責任』

  守屋俊晴氏の新刊『不正会計と経営者責任――粉飾決算に追いこまれる経営者――』を読みました。帯にある惹句はこういう感じです。

なぜ不祥事は起きるのか

粉飾のカラクリに迫る!

形骸化する監査・内部統制に警鐘を鳴らす

不正会計と経営者責任 ‐粉飾決算に追いこまれる経営者‐ (創成社新書56)

不正会計と経営者責任 ‐粉飾決算に追いこまれる経営者‐ (創成社新書56)

 

  本の構成としては,「東芝事件」の第2章をあて,また,第3章で,「第三者委員会」について検討を深めるなど,ひじょうに興味深い章立てになっています。

 読後の感想としては,日本経済新聞からの引用がとても多かったのが印象に残っています。ただ,紹介された記事の中には,原典に当たってみようと思ったものもあり,東芝事件の経緯を振り返りながら,日本経済新聞がどのようにこれを伝えてきたかを検証することができた点は,たいへん参考になりました。

 また,第三者委員会については,平成27年11月23日の日本経済新聞の記事を引用しながら,改善すべき事項として,以下の4点を挙げています。

①重要な問題なのに,経営者が暴いてほしくない点に触れないのでは,独立性のない疑似第三者委員会になること

②多くの報告書は委員の選定過程が明らかでないこと

③委員会の調査報酬を開示していないこと

④調査委に関係した人たちの調査時間等を開示していないこと

 ①はともかく,②から④の指摘はすぐにでも改善できることであろうかと思います。証券取引所が,このあたりの規制を強化する方向に舵を切れば,すむ話でしょう。

 現在,小職は,秋に予定しているセミナーの講義準備をしているところですが,参考にしたい記述が多くありました。