【書籍】上野庸平『ルポ アフリカに進出する日本の新宗教』

  著者がブルキナファソに滞在していた2014年前後に,実際に,施設や布教活動を見学し,インタビューを行ったものをまとめたルポルタージュである。タイトルには「日本の」とあるが,ラエリアン・ムーブメント統一教会といった,発祥が日本ではないものも含まれています。

ルポ アフリカに進出する日本の新宗教

ルポ アフリカに進出する日本の新宗教

 

 もともとがキリスト教徒多イスラム教徒であったはずのアフリカの人たちだったが,意外と簡単に仏教徒になる様子が描かれています。

仏教徒になったら貧しさから抜け出せるんじゃないかって考えてお寺に来る人が多い」と,ガーナにある日蓮正宗法華寺の日本人住職は,仏教の御利益信仰が,アフリカでの布教活動につながっていると指摘する。

 一方,筆者の上野さんは,日本とアフリカの宗教観の違いを次のようにまとめています(p.119)。

「宗教に興味がある」という言葉は日本で聞くと「怪しい新興宗教に入会しそうな人」を指し,「そんなヘンなことに興味を持つのはやめなさい」となる気がするが,むしろアフリカでは「宗教に興味がある」というと,正反対に「哲学的で真面目な真実を追い求めている人」みたいな意味で,「不信心者はその敬虔さを見習いなさい」となる気がする。

 アフリカ人の宗教観は,上野さんが見聞した範囲が限られていることもあって,法華寺の日本人住職の考えが正しいのかどうかも含めて結論は出せないところですが,「幸福の科学」「真如苑」「崇教真光」「創価学会」「日蓮正宗」といった,日本の新興宗教が,いかにアフリカの地に根づいてきたかを知ることでき,たいへん興味深いルポルタージュでした。