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【書籍】上村雄彦『不平等をめぐる戦争――グローバル税制は可能か?』

  読売新聞の書評欄で見つけて,読むことにしました。

 ちょうど台北旅行を予定していたため,その道程で,多くを読むことができました。

 著者は,国際連合に勤務した経験も有する大学教授。書評によれば,「税制の穴を防ぎ,地球環境問題や貧困,感染症など世界的な課題に取り組むための資金をねん出するのがグローバル・タックス」ということで,どういった処方箋を示し,実現のための工程表が語られるのかを楽しみに,読み進めました。

不平等をめぐる戦争 グローバル税制は可能か? (集英社新書)

不平等をめぐる戦争 グローバル税制は可能か? (集英社新書)

 

 読後の感想は,「グローバル・タックス実現は難しそうだ」という一言に集約できます。著者の,現状における問題認識については,大いに同意できますし,グローバル・タックスという考えが一つの処方箋であることは間違いないと思います。

 ただ,現状では導入は難しいだろう,ということです。

 理由は,いくつかあります。グローバル・タックスに先進国が同意する可能性はあります。税を徴収し,配分方法を決める機関の創設も可能かもしれません。問題は,配分すべきグローバル・タックスを受け入れる途上国において,受け入れた資金をその目的に合致した形で国民に分配するシステムがあるでしょうか。

 たとえば,貧困問題解決のために配分された資金が,独裁者の私腹を肥やさずに,解決のために使われるかどうか,疑問はないでしょうか。現在のODAが有している問題をグローバル・タックスの導入だけで払拭できるとは思えません。

 あるいは,先進国の中で,グローバル・タックスへの参入拒否,グローバル・タックスからの離脱が問題になるかもしれません。一つ抜け穴があれば,制度が画餅に帰す結果になることは,タックス・ヘイブンの現状を見れば明らかです。

 地球の抱えている問題を世界中で解決するための仕組みとしてのグローバル・タックスは,たしかに理想的です。実現すれば,大変けっこうなことだと思います。そういう意味でも,著者のこれからの活躍には大いに注目したいと思っています。