「公表裁決事例(平成28年7月~9月)」Profession Journal誌に寄稿しました。

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 先週23日,国税不服審判所が公表した裁決事例に関する速報解説記事をProfession Journal誌に寄稿しました。今回の公表裁決事例でも,「重加算税」の賦課決定処分に関する事例が二つあり,毎回のことですが,「重加算税」の要件に関して,国税不服審判所が強い関心を持っていることがうかがわれます。

 寄稿した記事でもとりあげましたが,筆者が個人的に非常に興味を持った事例は,住宅用建物の再転貸借契約が,「住宅の貸付け」として消費税法上「非課税取引」に該当するかどうかを争点とした裁決です。オーナーである納税者からすれば,建物購入時の消費税額等について仕入税額控除の適用を受けるためには,非課税取引となる「住宅の貸付け」ではなく,「住宅以外の建物の貸付け」としたいところです。

 そして,「居住用」に使用が制限されていないことの証拠として,転賃貸人との契約において「家賃保証」が規定されていることを挙げ,

請求人に対する賃貸人の賃料保証が設定されていることは,人が居住していないにもかかわらず賃貸料が支払われることを意味し,実際に居住する人の居住と賃料が対価関係にない

として,消費税法基本通達6-13-7の適用を受けない旨,主張しました。

 「だれも居住していない状態で家賃が保証されている期間」の賃料収入が,「住宅の貸付け」として非課税取引になるのかどうかは,個人的には,なかなか面白い論点であると考えるのですが,国税不服審判所は,この主張に対する反証はせず(公表されているのが「裁決書(抄)」ですから,全文が公表されていれば,この主張に対する反証もあるのかもしれません)に,転貸借契約の条項などから,「居住用」以外に使われていないとして,納税者の主張を棄却し,仕入税額控除を認めませんでした。

 この論点,もう少し追いかけてみたいと考えているところです。

平成28年7月〜9月分 | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所