「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

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 連載第58回目は,去る4月17日に公表された,昭光通商株式会社特別委員会報告書をとりあげました。M&Aによって子会社化したところ,ふたを開けてみれば,架空循環取引(報告書上の表記では「資金循環取引」)によって大幅に売上を水増ししていたことが発覚した事例で,最近あまり聞かれなくなった「架空循環取引事件」ということで,一部,「循環取引フリーク」に注目された事例です。

 手口はいたって簡単です。同じ経営者の所有する二つの会社の間に,昭光通商の子会社が割り込む格好で商流に加わり,仕入代金を早期に決済することで,資金繰りを支援した形になっていました。

 昭光通商取締役会では,当該子会社の与信限度額管理が何度か問題になっていたようですが,子会社売上高の過半を占める取引を即座に止めさせるという判断はしませんでした。

 昭光通商では,2015年にも,上海にある子会社で,売掛債権が回収できないという不祥事が発生して,特別調査委員会を設置しました。今回の調査でも,どうして,先の事件における再発防止策が徹底されなかったのかという点が分析されていますが,そうした分析を行っている特別調査委員会の委員に,本来,取締役会における再発防止策の取組状況を監視・監督する立場にいるはずの常勤監査役が就任しているのは,違和感がありました。