「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 Profession Journal誌で連載中の「会計不正調査報告書を読む」連載第61回は,富士フイルムホールディングス株式会社第三者委員会調査報告書をとりあげました。何しろ,長い報告書で,細部にわたって事実認定がなされ,まとめるのがたいへんでした(調査に当たられた弁護士,公認会計士のみなさんはもっとたいへんだったろうと思いますが)。

 調査報告書の読後の印象としては,2012年に発覚した沖電気工業のスペイン現地法人の不正事案に非常によく似ているなというもでした。グループ内では評判のやり手社長で,好業績に伴い,グループ内での地位も上がり,ますます,不正が拡大してしまう。不正の端緒をつかんだ海外の管理会社の担当は,いつの間にか,転職をしてしまう。親会社に対する隠蔽工作。長引く調査……。

 今回の調査報告書で興味深く読んだのは,親会社である富士フィルムHDに詳細を報告したくない副社長・専務と,事実を明らかにするよう迫る社長との間で揺れる,内部監査部門と経理部門の担当者の心情でした。結局,副社長の方が押し切ってしまうのですが,どうして社長に対し,副社長・専務の対応について報告をしなかったのか,報告書には書かれていませんが,気になったところです。

 本稿で連載第61回となった「会計不正調査報告書を読む」ですが,記録を調べてみると,連載第1回は,先ほど言及した沖電気工業の事案でした。公開日は,2012年10月25日で,創刊準備2号への掲載でした。懐かしいですね。今読み返すと,お恥ずかしい限りですが,連載を続けさせていただいているProfession Journal編集部に,あらためて感謝したいと思います。