経理責任者による不正――光彩工芸社

  JASDAQ上場の貴金属アクセサリーの製造販売会社株式会社光彩工芸は,8月18日,「当社経理部門責任者の不正行為に関するお知らせ」 を公表しました。

決算短信及び開示書類 - 株式会社 光彩工芸

 リリースによると,発覚の発端は「東京国税局の調査」ということのようです。なかなか発覚しづらい経理部門責任者単独による不正は,税務調査を契機として発覚することが多いのですが,本件も,監査等委員である取締役や会計監査人の目はごまかせても,国税調査官には見抜かれたということのようです。

 不正は,平成26年ころから開始され,被害金額は約230百万円ということのようです。光彩工芸社の過去の決算状況を拝見すると,不正が行われていたらしい平成27年1月期,平成28年1月期ともに赤字決算となっています。赤字決算の理由が,経理部門責任者の不正にあるかどうかは判然としませんが,とくに平成27年1月期は増収減益決算で,なおかつ赤字となっているわけですから,会計監査で不正の兆候は発見できなかったのかなと思うところです。

 過大な材料費た棚卸高の計上により,不正に金員を支出していたということですので,過年度決算の修正にあたっては,経理部門責任者に対する損害賠償請求権の計上(収益の計上)に伴い,赤字決算から黒字決算に転換する可能性もあるかもしれません。そうすると,法人税や消費税についても,重加算税の賦課決定処分を含む厳しい処分が待ち構えていることになります。

 不正に支出された金員は不動産投資に回されていたので,相当程度,損失の回復が可能であるということですが,失った信用の回復は簡単ではないと思われます。3人の社外取締役からなる監査等委員である取締役は全員が弁護士で,かつ,そのうち1人は公認会計士でもあります。経理部門責任者に権限が集中していることに対するリスク認識は,どういうものだったのでしょうか。