「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 このところ,寄稿が続いていますが,web情報誌Profession Journal誌に連載第63回目となる「会計不正調査報告書を読む」を寄稿しました。とりあげた調査報告書は株式会社AKIBAホールディングスの元取締役による不正な資金流用が発端となった事案です。事業会社を次々と買収して連結子会社化して,事業の多角化を図る持株会社の弱点が露呈してしまった感じの会計不正事件を,第三者委員会はどのように分析したんか。ぜひ,ご一読ください。

 本事案の特徴は,持株会社の取締役・監査役が,各事業会社の代表取締役以下経営陣を兼務していることにあったのではないかと思っています。コーポレートガバナンス上は,持株会社の取締役・監査役が,事業会社の経営陣を監視・監督する方が望ましい形であろうかと考えるのですが,当社はそういう仕組みをとっていませんでした。

 また,買収する前から行われていた不適切な取引が買収後も継続しているなど,持株会社としての事業会社管理に,かなり不備があったのではないかと考えます。

 調査結果を受けて,同社は経営陣の大幅刷新を行っています。

 再発防止という意味では,それは適切な施策なのですが,「どんどん子会社を増やして,事業領域を拡大する」といったこれまでの経営方針は転換されることになりそうで,そこは少し残念な気もします。

 何より,本調査報告書を読んだ東京国税局は,すでに税務調査の準備に余念がないのではないかと思います。架空請求に基づく簿外役員報酬の支払い,請求代金を水増しさせて利益の圧縮を図るといった会計処理は,課税当局からはおいしすぎる事実認定でしょうから。AKIBAホールディングス経理部門は,各子会社の修正申告や源泉税の追加納付など,遺漏のない税務手続を行うことを期待しています。