【書籍】一田和樹『公開法廷』

 「公開法廷」とは,投票権を持つ全国民が陪審員となる裁判のことで,ひとつの公判で三組の被告人が登場し,それぞれに検事と弁護士がついたうえで裁判が行われ,陪審員である国民の投票によって,三組の被告人のうちだれが真犯人であるか,または三組の被告人たちがすべて無罪であるかが裁かれる法廷のこと。テロ等準備罪が成立した後の日本が,どのような社会になるかを描いた近未来小説。結末が知りたくて,読み進めました。

公開法廷:一億人の陪審員

公開法廷:一億人の陪審員

 

  本筋から外れますが,本書の中で,「サヨク」についての言及が2カ所あり,面白く読みました。

カタカナのサヨクと表記されるようにって意味合いが変わった。きちんとした議論をせず,時には根拠もなく,同じ主張を繰り返す頭の悪い人々という揶揄する言葉に変わった。本来の思想的な側面は失われ,パッシングの際に用いるラベルになった。

文句だけ言って国をよくする具体的な行動をしない人にとやかく言われたくないなあ。僕知ってますよ。そういう人を最近は,カタカナでサヨクっていうんでしょう?

 本書の内容については,ミステリーという作品の性質上,言及を避けたいと思います。いささか荒唐無稽かもしれませんが,アメリカの犯罪捜査やサイバー・セキュリティに詳しい筆者ならではの視点がふんだんに盛り込まれていて,たいへん面白いストーリーとなっています。筆者の著作を読むのは初めてでしたが,ぜひ,他の書籍も読んでみたいと思っているところです。