「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 「会計不正調査報告書を読む」連載第65回となる今回の報告書は,藤倉化成株式会社の連結子会社藤光樹脂株式会社が巻き込まれた架空循環取引をめぐる売掛金回収不能事件です。

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 ことの発端は,ATT株式会社代表取締役が関係各社に送ったメールでした。それまでも急激な売上の増加から,架空売上の噂が流れていたATT株式会社でしたが,6月22日,代表取締役は架空取引であったことを認めました。

 真っ先に動きがあったのは,大阪に本店を置く老舗商社KISCO株式会社でした。同社がATT関係の取引で多額の損失を被ったことは,その後の東京商工リサーチのレポートで明らかになります(ただし,この時点では,ATT株式会社の名前までは報じられていませんでした)。

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 KISCO株式会社から送れること1か月余り,藤倉化成株式会社は,連結子会社である藤光樹脂株式会社が貸倒引当金を繰り入れる必要があったことを公表し,はじめて,ATT株式会社の社名が出されました。

 今回の記事は,藤倉化成株式会社が設置した特別調査委員会の調査報告書について,その内容を検討するものです。

 調査期間中である8月14日には,KISCO株式会社が設置した特別調査委員会による調査報告書をも公表されていますが,こちらは,ATT株式会社と思われる取引先については{A社」となっていました。

 広がりを見せるATT事件ですが,来週19日には第1回財産状況報告集会が開催され,債権者が判明するものと思われます。

 なお,KISCO株式会社が公表した報告書については,次週のProfession Jounal誌で公開することを予定しております。合わせてお読みいただくと,ATT事件についての理解が深まるのではないかと考えております。