【書籍】山口利昭『企業価値を向上させる実効的な内部通報制度』

 同じ公認不正検査士(CFE)資格を有しているということもあって親しくしていただいている,弁護士の山口利昭先生の著書『企業の価値を向上させる実効的な内部通報制度』を拝読しました。

 同じテーマで書かれた『内部告発・内部通報 その光と影』が刊行されてから6年あまり過ぎ,企業不祥事を見る国民の目も,内部通報制度に対する経営陣や従業員の認識も大きく変わっている中で,民間事業者における内部通報制度の第一人者である山口先生がどのような「解」を導くのか,たいへん楽しみにページを繰りました。 

企業の価値を向上させる実効的な内部通報制度 (現代産業選書―企業法務シリーズ)

企業の価値を向上させる実効的な内部通報制度 (現代産業選書―企業法務シリーズ)

 

  小職も「不祥事の再発防止策・早期発見策」などをお話しさせていただく機会がありますと,必ず,内部通報制度について説明をします。まずは通報を集めることが重要である,したって匿名通報も受け付けるべきだ,内部告発をされないためには通報を受けた会社側は真摯に対応しなければならないなど,教科書的な説明をすることが多いのですが,受講されているみなさんにどこまでお届けすることができているのか,甚だ心許なく思うこともあります。

 山口先生は,「走りながら考える内部通報制度」「トライアル&エラー」といった言葉で,まずは導入すること,100点満点を目指す必要はないことを説かれます。なるほど,という感じです。

 また,身近な問題であるがゆえに,比較的軽視しがちな「パワハラ問題」についての,山口先生の警鐘が強く印象に残りました。「パワハラが企業に及ぼすリスクは重大である」と説明されている部分は,きわめて含蓄に富んでいると感じました。このあたりのリスクについては,次に内部通報制度について話す機会があれば,ぜひ,紹介させていただきたいと思った次第です。