「会計不正調査報告書を読む【連載第70回】」Profession Journal誌に寄稿しました。

 不定期連載の「会計不正調査報告書を読む(第70回)」をProfession Journal誌に寄稿しました。今回,大豊建設株式会社で発覚した下請代金の不正支出に関する第三者委員会調査報告書がテーマです。

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 社内調査の段階では,有力者である会長が関与しての不正支出ではないかということで,会長は調査の結果,辞任を余儀なくされたわけですが,第三者委員会は辞任した元会長による指示はないまま,大豊建設が工事で得た利益を配分するという格好で,下請会社に追加で工事代金が支払われたという結論を下しました。

 報告書で気になったのは,2点です。

 元会長は自身の関与を否定し続けていたにもかかわらず,どうして辞任をすることになったのか。追加で工事代金の支払いを行った事業所長は,社長にそのことを自白したわけですが,社長は,内部通報制度を利用させて,真相究明を行うことにしたのはなぜか。どちらも,報告書からは十分に読み取れませんでした。

 それにしても,この追加の工事代金支払いは,税務上,困難な問題を引き起こしそうです。おそらくは,工事原価として損金の額に算入することができるかどうかについて,国税局による厳しい指摘がなされるのではないかと思われます。税理士2人が調査補助者として,第三者委員会に参加しているので,そのあたり,抜かりはないと思うのですが。