「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 ほぼ月に1回連載させていただいている「会計不正調査報告書を読む」の第72回の連載記事が本日公開されました。今回は,少し趣向を変えて,東京証券取引所昭光通商株式会社に徴求した「改善報告書」と「改善状況報告書」から,短期間に2回の調査委員会設置を余儀なくされた昭光通商における危機管理の問題点を考察しました。

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 2015年5月,昭光通商は,中国企業向けの取引における売掛債権が回収できなくなったとして,128億円の貸倒引当金を繰り入れ,特別調査委員会を設置して,原因分析と再発防止策の提言を受けました。

 特別調査委員会による調査結果を公表してから約1年半ほど経過した2017年2月,今度は子会社における中国企業との取引が資金循環取引であったとして,再び,特別調査委員会を設置して調査を行うことを公表しました。4月になって公表された調査結果を読むと,第一次調査が行われていた最中にも,子会社による資金循環取引はどんどん金額を増加させていたことがわかります。

 そもそも,第一次調査委員会の調査の範囲を,貸倒引当金を設定することとなった昭光通商と昭光上海に限定せずに,すべてのグループ会社を対象としておれば,その時点で資金循環取引は発覚したことでしょう。また,せめて,第一次調査委員会の提言にしたがって,すべての子会社の取引について商流を確認していれば,有価証券報告書を訂正せずに済んだかもしれません。

 昭光通商経営陣は,なぜ,調査範囲を限定して,あるいは,第一次調査委員愛の提言をないがしろにしたのか。その答えを「改善報告書」から探ってみたいというのが,連載第72回の趣旨になります。

 ご一読いただければ幸甚に存じます。