「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 毎月連載しているProfession Journal誌の「会計不正調査報告書を読む」。第74回となる本日公開の記事は,日本紙パルプ商事株式会社の社内調査委員会調査報告書をとりあげました。ノンコア事業,非連結子会社,内部統制スコープの範囲外という,常況会社の子会社で不正が起きる場合の3点セットとでもいうべき特徴を備えた子会社を舞台にした会計不正は,子会社設立時から取締役の職にあった実力者(専務)によるものであり,横領まで行われていたことが判明しました。

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 今回不正が明らかになった子会社では,過去にも,元取締役による横領事件があったことが,調査報告書で触れられています。2014年における親会社監査部門による業務監査により発覚したとのことですが,このときの再発防止策が不徹底であったことが,原因分析の中で,挙げられています。1件の不正が発覚するということは,複数の露呈していない不正が存在することを意味している場合が多いのは,過去の事例が示すとおりです。ノンコア事業を担う小規模な子会社であっても,いざ,不正が発覚してしまうと,上場会社グループ全体に大きな影響を及ぼすことになるのもまた,過去の経験が教えるとおりです。発覚した不正を個人の資質によるものであるとか,特異な事例であるとして矮小化することなく,他に同様な不正の予兆はないかきちんと調査を行い,原因を分析して,再発防止を図っておくことの必要性をあらためて示した事案でした。