「租税争訟レポート」Profession Journal誌に寄稿しました。

 概ね隔月で寄稿させてもらっている「租税争訟レポート」連載第39回が,web情報誌Profession Journalで公開されました。今回は,中小企業庁公正取引委員会による「消費税額等の適正な転嫁措置」と,国税当局による「課税仕入れとして仕入税額控除の対象とした外注費の給与認定による消費税の課税処分と源泉所得税の納税告知処分」の関係について,ある意味,問題を提起するために記事をまとめました。

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 公正取引委員会が公表しているQ&Aでは,消費税の免税事業者が仕入先であっても,消費税率の引き上げに伴い適正な転嫁が必要であるいうことが強調されていて,それって「益税」が増加するだけで,国の消費税収が減少する措置ではないのかと,疑問が沸き上がります。もちろん,免税事業者といえども,仕入や経費に係る消費税額が増加しているので,保護するための措置であるというのは頭では理解できますが,であれば,免税事業者を課税事業者に転換させて,適正な消費税の申告納付を推進すべきではないでしょうか。

 一方,事業所得といえないような外注事業者に業務を委託している事業者からすれば,消費税を上乗せして外注費を支払うのは,損益に影響はありませんから,転嫁を拒否する必要はありません。ところが,そうした外注費について,税務調査の現場では,課税仕入れではなく,雇用契約に基づく給与所得とみなして,仕入税額控除を否認し,場合によっては重加算税を課し,同時に,源泉所得税の徴収洩れを指摘して納税告知処分を行われ,しかも,納税義務者の審査請求について,国税不服審判所は,公表されている裁決要旨を見る限り,すべて棄却しています。

 もちろん,雇用契約を締結して,給与として支払い,源泉徴収をすれば解決する問題かもしれません。ただ,雇用者側からすれば,雇用に伴い社会保険料等の負担が生じ,解雇制限があるので,躊躇を覚え,外注で働く人からすれば,他社の仕事が請け負えなくなることや扶養親族の要件を充たしておきたいことなどを理由に,やはり,雇用契約よりは業務委託契約の方がいいなど,両者の利益は一致します。

 実は,簡単な解決策はいくつもあります。

 例えば,青色申告の承認を得て,事業所得を申告している個人事業者については,すべて課税事業者とすれば,問題は解決するわけです。あるいは,白色申告の事業者についても,帳簿の作成・保管義務が課されていますから,事業所得の所得区分で申告尾をする個人事業者はすべて,消費税については,課税事業者とすることも考えられます。日本版インボイス制度が導入され,免税事業者が取引から排除されるのではないかという懸念が語られていますが,本来,例外的な存在であるはずの免税事業制度を縮減,又は廃止することによって,益税の発生を防止し,かつ,消費税の適正な転嫁を図るということであれば,大いに納得できるところですが,いかがなものでしょうか。

 そんな「租税争訟レポート」になりました。

 ご興味をお持ちいただけるようでしたら,ぜひ,ご一読ください。