何度か,ゲンロンカフェでお話を聞いたことのある観光学者井出明氏の『ダークツーリズム――悲しみの記憶を巡る旅』を読み終えました。
ダークツーリズムとは,「人類の悲劇を巡る旅」と定義されるとのことで,私自身は,井出先生の話を聞いて初めてその存在を知った次第ですが,本書によれば,1990年代からイギリスで提唱されてきたそうです。
本書を読んで,行きたいなと思った場所はいくつかありますが,どうもレンタカーがないと交通アクセスが悪いようですので,少し,ハードルが高いようです。
産業としての観光の意義について,井出先生は興味深いことを言っています(本書62ページ)。
ある地域が観光に活性化の緒を求めるということは,それだけ基盤となる他の産業がないことを意味しており,多くの場合“最後の賭け”のように観光に期待してしまう。しかし,観光マーケティングはかなりテクニカルなものであるとともにハイレベルの知識を要求されることに加え,実は理論上正しい展開を試みたとしてもなぜか成功しないという例もままある。
観光庁は,訪日外国人旅行者を2020年に4000万人にすることを目標としているようですが,「他に基盤となる産業がない」から「オリンピック・パラリンピック誘致」で,“最後の賭け”に出たということでしょうか。
井出先生は,他の箇所でも,「地域と大学は観光に頼るようになったら終わりだ」と述べていらっしゃいます。