「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 今回の記事が,スルガ銀行三者委員会報告書です。報告書自体が300ページ超ということもあって,前後編になってしまいまいました。前編は,事実関係を中心に,後編は,ネット上に流れている被害者の声なども取り上げつつ,まとめています。

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 報告書が公表されると,新聞各紙はこぞって特集を組んで,スルガ銀行の営業の過酷さやパワーハラスメントを指弾し,また,書類の改ざんなどの悪質性を報じてきましたが,シェアハウスオーナーが被った損害をどう救済するのか,という視点はあまりなかったように感じました。不動産投資はもちろん自己責任ですので,救済する必要はないという考えもあるかもしれません。しかし,本件では,融資申込書類の改ざんや偽造により,本来は,融資を受けられなかった人(=被害に遭う必要のなかった投資家)に融資がされてしまった結果,空室のシェアハウスと多額の負債が残ってしまった人も数多くいるようです。ましてや,スマートデイズによって物件価格が大幅に引き上げられていたという情報が事実なら,これは詐欺被害に等しいのではないかとも思えます。被害弁護団のサイトを読むと,当初,被害に遭ったシェアハウスオーナーの救済に前向きだったスルガ銀行が,第三者委員会調査報告書が公表されてからは,一転,被害弁護団との交渉を拒否しているようです。

 スルガ銀行三者委員会による300ページを超える報告書ですが,それだけのページを要しても,解明できていない点は少なくない気もしています。例えば,まったくスコーピングの対象外に置かれていた創業家ファミリー企業に対する融資の実態です。もちろん,不正融資問題とは何の関係もない,かもしれませんが,スルガ銀行の企業風土を問題視するのであれば,避けては通れなかったはずです。事実,金融庁による行政処分の中では問題点として挙がっています。

 あるいは,会計監査人は気づいていなかったのか。気づいていなかったとすれば,会計監査の手法に問題はなかったのか。

 後編は,11月15日公開予定です。