「会計不正調査布告所を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 スルガ銀行不正融資問題をめぐる調査報告書を読むシリーズも,第3回となりました。11月14日に公表された「取締役等責任調査委員会調査報告書」と「監査役責任調査委員会調査報告書」についての寄稿が,Profession Journal誌で公開されました。

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 取締役等責任調査報告書については,第三者委員会調査報告書の見解をほぼ踏襲する格好で,調査対象の現旧取締役及び元執行役員ののうち,現代表取締役及び社外取締役以外の全員について,シェアハウスローン問題に関する監視監督義務違反及び内部統制システム構築に関する善管注意義務違反を認めて,相当因果関係のある損害額を認定しました。

 一方,第三者委員会調査報告書で善管注意義務違反があるとされた常勤監査役2名については,監査役の責任判断の前提となる事実として,

(1) 審査の実質的な形骸化
(2) 融資関係書類等についての改ざん・偽装
(3) 取扱いを停止したチャネルとの迂回取引その他チャネル管理上の問題
(4) シェアハウスローンのリスク分析・対応の不備

の4項目を挙げて,スルガ銀行の実態からみて,常勤監査役については,「取締役の違法行為等の兆候を認識し、又は認識し得たとは認められないことから、監査役としての善管注意義務違反は認められない」という結論を導き出した格好になっています。

 新聞報道では,スルガ銀行は,被害にあったシェアハウスオーナーに対する貸付金の元本カット(最大70%)も視野に入れているということです。

 他にも類似の事案があったことを公表して特別調査員会による調査が進んでいる株式会社TATERUと同社が手がける不動産に関して融資を小なっているとされる西京銀行,子会社で住宅ローンに関して同様の不正があったことが第三者委員会の調査で判明した九州旅客鉄道株式会社(JR九州)など,不動産融資をめぐる不正が続発する中,先行しているスルガ銀行の被害者救済策,再発防止策は,今後も取り上げられることが多くなるに違いありません。