「会計検査院平成29年度決算検査報告」Profession Journal誌に寄稿しました。

 昨日公開のProfession Journal誌に,会計検査院「平成29年度決算検査報告」で特定検査対象となった税制上の論点整理 【前編】「開廃業手続による事業の引継ぎを行って事業を開始した場合における個人事業者の消費税の納税義務の免除について」 というかなり長いタイトルの論考を寄稿しました。

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 会計検査院平成29年度決算検査報告」そのものは1,000ページを超える大部なものであり,とても全文を読んでいる人はいないのではないかと思われるのですが,今回の企画は,その中でも「特定検査対象に関する検査状況』として取り上げられた5項目のうちから,税制に関連する検査対象である「競馬等の払戻金に係る所得に対する課税状況について』と「開廃業手続による事業の引継ぎを行って事業を開始した場合における個人事業者の消費税の納税義務の免除について』の2項目について,会計検査院の検査結果の概要を紹介するとともに,税理士の観点から,いくぶんかの私見を述べることを目的としています。

 昨日公開された「前編」では,事業の引継ぎを行って開業した個人事業者については,開業から2年間は,消費税の事業者免税点制度を利用して消費税の納税義務を免除されているわけですが,これらの事業者が,どのくらいの事業収入を上げているかについて,会計検査院は全国的な検査を行いました。その結果,新旧の事業者の事業収入を把握できた212人のうち,145人が同じ規模の収入を上げており,43人は新経営者の方が旧経営者より高額の事業収入を上げていることが判明しています。つまり,残りの24人を除き,旧経営者と同程度かそれ以上の事業収入がありながら,事業者免税点制度の恩恵により,消費税の納付を免れている実態が明らかになっています。

 会計検査院は,財務省に対して,消費税に関わる幅広い議論が十分なされるよう,事業者免税点制度等の在り方について,引き続き,様々な観点から有効性及び公平性を高めるよう検討を行っていくことが肝要であると提言して,検査報告を締め括っていますが,もう少し強く,財務省国税庁の不作為を責めてもいいのではないかと,個人的には思います。と言いますのも,消費税が導入された平成元年当時,基準期間である前々念の売上高が3,000万円以下であれば,免税事業者とされていました。平成16年4月からは1,000万円以下に改正されて現在に至っており,法人については大法人の子会社を除外するなど,免税事業者が消費税を受け取る「益税」を少しでも減らすよう,改正が繰り返されてきましたが,事業を承継した個人事業者については,特段の施策は取られてきませんでした。

 できれば,会計検査院には,検査対象とした212人の事業者が,本来であれば納付すべきであった消費税額等を試算していただき,「益税」対策をさらに進めるように,内閣に進言すrくらいの姿勢があればよかったのではないでしょうか。