「公表裁決事例」(令和4年1月分から3月分)。

 国税不服審判所は,先週9月28日,「令和4年1月から3月までの裁決事例の追加等」を公表しました。

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 今回公表された裁決は,所得税法が2件,法人税法及び相続税法が各1件で,合わせて4件と,前回公表分(令和3年10月から12月)と同じく,非常に少なくなっています。新型コロナウイルス感染症の影響で,審査請求件数が減少しているとはいえ,10件をやや下回る程度の裁決を四半期ごとに公表してきたここ数年の実績からは,公表件数が少なすぎるのではないかと感じます。あらためて言うまでもないことですが,国税不服審判所による裁決は「全件公表」が原則で,納税者の個人情報が特定される可能性があるなどといった特殊な裁決のみが非公表であるべきだと思います。情報公開請求でいちいち開示請求をしないと裁決文書に目を通すことができない現状こそ,「税務行政のDX」の対象として,改善を図ってほしいと思います。

 それはさておき,裁決事例が追加されるたびに,web情報誌Profession Journal誌に寄稿している「速報解説」が,先ほど,公開されました。

profession-net.com

 なにぶん,公表された裁決が4件しかないので,「注目事例」を選定するのにも苦労した次第ですが,所得税における事業所得の必要経費の範囲の問題と法人税における実質所得者課税の問題を,注目事例として取り上げました。とくに後者の事例は,原処分庁の判断が,証拠ではなく,関係者の申述に依拠し過ぎたものとなっており,ある意味,調査担当者の思い込みを諫める性質を有した裁決になっているのではないかと思料します。

 ご一読いただければ幸いです。