「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 Profession Journal誌の連載記事「会計不正調査報告書を読む」の今月2本目,連載第134回が,17日(木)に公開されています。先週のアルテリア・ネットワークス社に続き,NTTドコモに対する不正通話による着信アクセスチャージの不正請求事件でソフィアホールディングス社が設置者独立調査委員会による「答申書」をとりあげました。

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 刑事事件としては,ソフィアホールディングス連結子会社であるソフィアデジタル社代表取締役の方が,実行犯に近い立場にあるように感じていますが,逮捕された方たちは事件への関与を否認しているということですので,事実は刑事裁判の中で明らかにされることになりそうです。

 代表取締役以下2名の役員が逮捕されたソフィアデジタル社は,取締役3名,従業員13名の小世帯ながら,着信課金サービスに係る売上高は3,312百万円,売上総利益は644百万円(2022年3月期実績)と,ソフィアホールディングスの連結経常利益889百万円の70%を超える利益を稼いでいました。こうした収益構造が,ソフィアデジタル社の着信課金サービス事業とそれを一人で牛耳っていた代表取締役を聖域化していた面があるのではないかと,答申書とその後の着信課金サービス事業からの撤退を公表するリリースを読みながら,感じました。

 もう一つの感想は,社外取締役・社外監査役は,ここでも,まったく情報の圏外に置かれていたということでした。ソフィアホールディングス社の2名の社外取締役はともに弁護士であり,社外監査役2名は弁護士と公認会計士であり,本来,コーポレートガバナンスのかなめとしての役割が期待されていたのではないかと思料しますが,社外役員をサポートする体制がなく,社外役員が出席する会議で重要な審議は行われていなかったようです。ただ,試験ではありますが,社外取締役・社外監査役が,宇久数社の社外役員を兼務しているのが気になりました。もっとも兼務している役職が多い弁護士である社外取締役の一人は,2022年3月期の有価証券報告を見る限り,6社で社外監査役,2つの投資法人監査役員に就任し,さらには,社外取締役と取締役(監査党委員)の現任が各1社となっており,ソフィアホールディングス社を含めて10社で役員を務めながら,本業であるはずの弁護士業,さらには大学の非常勤講師もこなされているようです。まだお若いので,エネルギッシュに働いていらっしゃるのだと少し羨ましくも思いますが,ソフィアホールディングス社グループの業務内容――とくに事業のリスクをどれくらい把握できていたのかなという疑問も抱いてしまいます。