「会計不正調査報告書を読む」連載第179回が公開されました。
毎月連載しているweb情報誌Profession Journal最新号が,1月15日に公開され,当職の連載記事「会計不正調査報告書を読む」第179回も,公開されています。
このところ,年明け最初の寄稿は,前年1年間の調査委員会設置状況についてまとめたものとなっており,第三者委員会ドットコムさんの公開情報をもとに,集計した結果を寄稿しています。
記事の冒頭でも触れましたが,2025年において調査委員会設置したことを公表した会社は43社,これに兵庫県を加えて44の企業・団体が,合計50の委員会設置を公表しています。ここ数年60~70ほどの委員会設置が公表されていたことに比べれば,ずいぶんと少ない印象です。しかも,ここのブログでも何度か触れていますが,1社で2つの調査委員会設置を公表するケースが6社と,けっこう目立っていました。
特徴としては,大手監査法人を会計監査人とする企業が過半数をやや上回る程度まで減少していること,過去2年と同じく給付金の不正受給案件が発生(4件)していること,などが挙げられそうです。
2026年がどうなるかはわかりませんが,大型の不祥事案件の調査報告書がまだ公表に至っていないこと,昨年12月から本年1月にかけて,委員会設置を公表する企業が増加傾向にあることなどから,引き続き,リリースを注意してチェックしたいと思います。
第三者委員会ドットコムさんのサイトはこちらです。
本年もどうぞよろしくお願いします。
「公表裁決事例令和7年4月~6月分」速報解説として寄稿しました。
国税不服審判所が,3か月に一度公表している裁決事例の最新版「令和7年4月~6月分」が,12月17日に公開されましたので,web情報誌Profession Journalに速報解説として寄稿しました。
今回公表された裁決は9件で,1件が全部取消しとなっている外はすべて棄却です。
裁決を読んでいる側からすると,「一部取消し」や「全部取消し」については,原処分庁側の判断の誤りがわかるので,すべて公開してほしいわけですが,審判所は,このところ「棄却」裁決ばかり選んで公開しているのかと疑心暗鬼になります。
速報解説でとりあげた事例⑤は,フェラーリF50事件としてよく知られている判決とよく似た事案のようで,こうした激レアなスーパーカーを譲渡した場合に,購入価格から減価償却費を控除した金額を取得費として譲渡所得金額を計算すべきか,書画や骨とう品のように,「減価しない資産」として取得費を計算すべきかが争われた審判ですが,審判所は裁判所と同様に,車両=時の経過によって減価する資産という判断のもと,審査請求人(納税者)の主張を斥けました。
ぜひ,ご一読ください。
「会計・監査ジャーナル」に寄稿しました。
発売中の「会計・監査ジャーナル」2026年1月号に,学会レポートとして,一般社団法人日本公認不正検査士協会主催の「ACFE JAPANカンファレンス2025』の模様を寄稿しました。
このblogでもご紹介しているように,ACFE JAPANカンファレンス2025はリアル開催とプレカンファレンスの配信という二本立てになっており,リアル開催に参加する前に,プレカンファレンスを視聴することにより,より理解が深まるよう工夫されています。プレカンファレンスに登壇した規制官庁の担当者が,リアル開催でACFE JAPANの理事とディスカッションをするという試みは,たいへんよかったと評しておきました。
掲載にあたっては,第一法規の編集ご担当者から,誤字の訂正や語彙のばらつきの是正,その他細かいご指摘をいただきました。当職の文章が読みやすくなったとすれば,それは編集ご担当者の力量に負うところが大きいはずです。
学会レポートでは,ACFE JAPAN事務局への苦言も少し書きました。寄稿文の一部を再掲しておきます。
プレカンファレンスの講演とメインカンファレンスのディスカッションを連動させる試みついてはすでに書いたように成功したと評価できる。もう一段階工夫をしてもらいたい点は,プレカンファレンスの視聴順序を選べないという現在の配信システムである。筆者は,事前にすべてのプレカンファレンスを視聴する時間を確保できたため,メインカンファレンスでのディスカッションを大いに楽しむことができたが,CFE会員の中には,「せめてメインカンファレンスの登壇者によるプレカンファレンス講演だけでも事前に視聴しておきたかった」と思った参加者もいたのではないか。気になるテーマから順に視聴できるシステム,視聴者が視聴順序を選べるシステムへの変更を強くお願いする次第である。
さて,2026年のカンファレンスではどのような企画が用意されるのか,楽しみに待ちたいと思います。
「会計不正調査報告書を読む」連載第178回が公開されました。
毎月連載させてもらっているweb情報誌Profession Jouranal最新号が昨日公開になり,当職の「会計不正調査報告書を読む」連載第178回をお読みいただけます。今回は,株式会社旅工房が設置した特別調査委員会による2025年8月29日付の調査報告書をとりあげました。旅工房が公表した報告書を本連載でとりあげるのは3度目になります。今回は,雇用調整助成金の不正受給が問題となりましたが,前回は,Go Toトラベルに係る給付金の不正受給問題であり,新型コロナウイルスによる業績低迷期に,元代表取締役以下の経営陣が,不正を企てていたものと評価されても仕方ないでしょう。
今回の調査によって,2021年3月期決算が債務超過となっていたことが判明し,東京証券取引所は,旅工房株式を特別注意銘柄に指定するとともに,上場違約金960万円を徴求する処分を公表しました。
旅工房は,人材あっせん会社からの紹介で公認会計士資格を持つ者を代表取締役として迎え入れました。創業メンバーの一人であり大株主である元代表取締役の悪い影響を受けていない代表者のもとで,今後,どのように業績を立て直すか,試されることになります。
ぜひ,記事をご一読ください。
「租税争訟レポート」連載第82回が公開されました。
隔月で連載しているweb情報誌Profession Journal最新号が12月4日(木)に公開され,当職が寄稿した「税務争訟レポート」連載第82回を読むことができます。今回は,租税訴訟の判決をとりあげたものですが,当職が長年追いかけている「従業員不正と課税処分」をめぐる事案です。
仙台にある建設会社で,営業部門のトップが主導して,外注費の査定を行うべき発注部門を巻き込んで,水増し発注を行い,水増し金額の多くをキックバックさせていた事案で,仙台地方裁判所は「重加算税」の賦課決定処分を取り消す判決を行いましたが,これを仙台高等裁判所が取り消し,重加算税の賦課決定処分が適法となる判決が確定しました(上告受理申立て不受理)。
重加算税の賦課決定処分をめぐっては,法人の行為と同視できる者の範囲について,必ずと言っていいくらい争点になりますが,本件では,首謀者は,水増し発注を始めた時点では「次長」でしたが,その後「専務取締役」まで出世しています。不正を行っている者が順調に出世するケースがとても多いのは驚くべきことですが,それはともかく,首謀者は,「私的利益を目的」として、「会社の納税義務を過少に見せかけることを目的」としていないことは明らかであり,これまでの課税実務では,重加算税の賦課決定処分までは……という事案ではなかったかと思います。
詳しくは,Profession Journal誌をご一読ください。
「会計不正調査報告書を読む」連載第177回が公開されました。
web情報誌Profession Journal最新号が,11月27日に公開され,毎月連載している「会計不正調査報告書を読む」連載第177回を寄稿しています。今回は,いわき信用組合が6月30日に設置した特別調査委員会調査報告書をとりあげました。いわき信用組合は,昨年11月15日第三者委員会を設置して,不祥事調査を行いましたが,半年以上の調査を行ったにもかかわらず,不正融資で引き出した資金のうち約10億円の使途が解明できなかったことから,あらためて調査を行ったものです。
報告書が公表されると,多数のマスコミは,いわき信用組合において反社会的勢力への資金供与などがあったことを批判的に報じました。それは,第三者委員会による調査が,信用組合の現・元職員らの妨害に遭って,事実関係の解明が進まなかったことの要因が,「反社会的勢力と旧経営陣との癒着」を隠蔽するためのものであったと考えることができるためであったからに他ならないでしょう。
報告書公表日の翌日,岩手信用組合は,金融庁から,「11月17日(月)から12月16日(火)までの間、新規顧客に対する融資業務を停止すること」を含む行政処分を受けています。これを受けて,いわき信用組合は,11月14日付で,「業務改善計画書」と「反社会的勢力遮断への取り組みプラン」をリリースしました。
いわき信用組合にとっては大きな代償を払うこととなった長年の不祥事隠蔽でしたが,これを機に,地域に欠くことのできない金融機関として信頼を回復できるよう,業務改善計画を愚直に実践してもらいたいと思います。
「会計不正調査報告書を読む」連載第176回が公開されました。
本日,web情報誌Profession Journal誌で連載中の「会計不正調査報告書を読む」の最新版となる連載第176回が公開されました。今回とりあげた調査報告書は,株式会社創建エースが設置した特別調査委員会による調査報告書です。
2025年に入って厳しい処分が目立つ東京証券取引所ですが,創建エースも架空売上の計上で「一発退場」となりました。久しぶりに黒字決算となった2023年3月期の売上高約43億円のうち,97.4%が架空売上で,赤字決算を粉飾していたことが調査委員会による調査の結果,明らかになったものですので,上場廃止はやむを得ない処分だとも言えますが,上場維持のためなら手段を選ばなかった旧経営陣の罪は重いと考えます。
2024年6月から経営を担ってきた西山由之氏は,創建エースのサイトで意気軒高な様子を見せており,その経営手腕がどのように発揮されるのか。例えば,数年後に,再上場を果たすようなことがあれば,新しい神話になりそうですが,こればかりは今後の推移を見るしかありません。
また,西山氏は,旧経営陣にの責任を追及することを明言しておりますので,おそらくは裁判所の場で展開されるはずの論争についても注目したいと思います。後は,会計監査人が,どうしてこのような単純な架空売上を見逃してしまったのか。隠蔽工作は種々行われていたようですが,A社から受注してB社に発注する形態の売上が,連結売上の97.4%を占めていること自体が,明らかに不自然なのではないかと思います。西山氏は,会計監査人の変更について触れていませんが,個人的には疑問です。