「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。
連載第47回目となる今回は,株式会社日本製鋼所の100%子会社で,経理課長が行った粉飾決算をとりあげました。本件,手口は単純なものであり,発覚した会計期間の1期前にも,当該子会社を所管する部門において,すでに不正の兆候が見つかっていたにもかかわらず,十分な追及がなされないまま,粉飾決算が繰り返されていたものです。
また,会計監査人も,内部調査委員会によって,以下のように断罪されています。
監査法人は,(中略)会計データにつき十分な検証を行っておらず,本件不適切会計処理を検出することはできなかった。
そのうえで,再発防止のための直接的な対策として,
監査法人に対し少なくとも担当者の見直しを含む適切な改善策を求めるべきこと
を明記するという,徹底ぶりです。
こうした報告は,外部の第三者委員会ではなかなか踏み込めない範囲ではないかと思うのですが,本件内部調査委員会は,親会社の顧問弁護士と常勤の監査役が調査にあたっていることから,かなり思い切った内容になっているのではないかと考えます。
とはいっても,会計監査人の再任を妨げるほどの事象ではないと判断されたようで,6月の定時株主総会ではこれまでと同じ監査法人が会計監査人として選任されておりました。