「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 9月に公表されたProfession Journal誌にはすべて,当職の記事が掲載されることになりました。題して「週刊米澤勝」。その掉尾を飾る(?)のが,「会計不正調査報告書を読む」連載第90回です。今回は,元会長以下3名の逮捕者を出したすてきナイスグループ株式会社の第三者委員会調査報告書をとりあげました。

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 粉飾決算の内容は,元会長が実質的に支配する,グループ外の会社に対して約32億円の売上高を計上する方法により,経常利益を約5億円かさ上げしたものであり,売掛債権が滞留しないように連結子会社を通じて融資を行って,売掛金の回収に充てていたというものでした。

 調査報告書を読んで理解に苦しんだのは,すてきナイスグループの会計監査人が,こうした事実関係について監査役が疑問を呈していたにもかかわらず,「問題ない」との立場をとっていたことに尽きます。

 もともと,すてきナイスグループには,非連結のグループ会社が多く存在しており,連結するかしないかの判断について,会計監査人との間で,問題となることもあったようです。実際,本件粉飾が行われた平成27年3月期以降には,会計監査人の提言に従って、子会社の解散、連結会社への吸収合併を進めるとともに、多くの非連結子会社を連結の範囲に取り入れているという説明がなされています。

 いわば古典的とも言える実質的に支配していながら連結対象ではない会社を利用しての架空売上の計上で,元会長ら3人は逮捕され,元取締役の1人を除く2人が起訴された事件ではありましたが,調査報告書を読む限り,横浜地検が逮捕しなければならないほどの悪質性の高さは感じられませんでした。元公認会計士の細野祐二さんも,同様の印象を持たれたようであり,FACTA2019年10月号では,「針小棒大」な横浜地検の捜査を批判しています。

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