「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 毎月連載させていただいているProfession Journal誌の「会計不正調査報告書を読む」連載第92回が,本日,公開されました。今回とりあげた報告書は,株式会社平山ホールディングス(以下「平山HD」と略称します)第三者委員会による調査報告書です。

profession-net.com

 平山HDは持株会社で,主たる事業会社である株式会社平山,今回不正な売上が問題となったFUNtoFUN株式会社などにおいて,技術者やスタッフの派遣事業を行っている企業グループです。連結売上高約200億円,グループ会社14社,連結従業員数約1,900名の企業グループの持株会社平山HDには,8名しか従業員は所属していませんでした。「会計不正調査報告書を読む」連載第90回でとりあげたすてきナイスグループ株式会社のときにも,グループ全体の従業員数に比して,持株会社の従業員数が少ないことに驚きましたが,今回もよく似た状況でした。

 8名の従業員では,内部監査部門に割く人員も限られ,「1名」でグループ全体の内部監査を行っていると平山HDの有価証券報告書に記載があります。さすがにこれでは厳しいかなというのが実感でしょう。

 今回は,監査法人が取引の実在性に疑義を感じて,決算期末から株主総会招集通知前の期間に調査を行って,財務諸表を修正することが可能となったこともあり,平山HDは,誤った有価証券報告書を提出することなく,いわば自浄能力を発揮できた格好になりました。会社としては,会計監査人との連携がうまく言った事例と言えるのではないかと思うのですが,平山HDは,有価証券報告書提出後に会計監査人の異動を公表しています。詳細は不明ですが,なんとなく後味の悪いものを感じてしまいました。

 また,平山HDは,今回の不適切な売上計上について,取引を主導した執行役員をはじめ,関係者の処分について,リリースを出していません。会計監査人は売上の実在性に疑義を示して,第三者委員会は売上の計上を認めない判断をしているのだけど,会社としては不適切だったとは思っていない――だから監査法人を交代させ,社員を処分する必要もない――そんな,経営陣の思いが伝わってくるようにも感じました。