書籍「エシカルな決算書のすゝめ」尾中直也著

 タイトルに惹かれて,取り寄せてみました。サブタイトルは「粉飾」と「脱税」から見る会計学――さらに腰巻にも,「粉飾」と「脱税」という2つの観点から会計処理を論じた初の書籍,とあります。

 これはさっそく読むしかありません。

エシカルな決算書のすゝめ 「粉飾」と「脱税」からみる会計学

エシカルな決算書のすゝめ 「粉飾」と「脱税」からみる会計学

 

 目次はこうなっています。

第1章 日本を取り巻く会計と税務の接点

第2章 「粉飾」総論

第3章 「脱税」総論

第4章 事例で見ていく「粉飾」と「脱税」の手口

第5章 「粉飾」と「脱税」を抑制するには 

 ちょうど週末でもあり,あっという間に読んでしまいました。

 「粉飾」と「脱税」とをコインの裏表のように論じる本書には,第4章にかかわらず,多くの事例が取引の概要図付きで解説されています。取引の流れを図示するのは,私自身,常日頃苦戦していることもあって,参考になりました。 

 個人的に,最も興味を持って読んだのは,第5章の「粉飾」「脱税」の抑制策でした。著者は,ここで,会社を4つに区分し,それぞれの区分に属する会社について,不正のトライアングル仮説をもとに,どのような「動機」「機会」「正当化」が存在するか,論考を重ねます。この部分は,本書で最も興味深かったように思います。そのうえで,具体的な抑止策について,提言をされています。

 具体的な提言については,ぜひ,本書をお読みいただきたいと思いますので,ここでは触れません。

 ひとつ,個人的な見解を述べますと,「脱税」が根絶やしにできない理由には,日本人の有する「嫌税感」「痛税感」があるような気がしています。ヨーロッパ諸国と比較して,決して国民負担率が高いとは言えない日本人に,これだけの「嫌税感」「痛税感」があるのか。自分たちが納めた税金の使われ方への不満があるということも考えられます。将来に対する漠然とした不安感から,納めるべき税金は少しでも少ない方がいいという考えもあるかもしれません。会社経営者,納税者に倫理を求める以上,税を課し,徴収する側にも,それ以上の倫理が求められるのではないかというのが,本書を読んだ後の感想でした(書籍の中身とあまり関係のない感想で申し訳ないですが)。

 ご一読をお薦めします。