「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 毎月連載中のweb情報誌Profession Journal最新号が公開され,「会計不正調査報告書を読む」連載第149回が掲載されました。今回は,代表取締役自ら不正取引に手を染めていた不動産会社株式会社アルデプロの社外調査委員会調査報告書をとりあげました。株式会社アルデプロと聞いて,「あれ,昔,何かなかったっけ?」と思い出せる記憶力の高い方は,どれくらいいらっしゃいますか? 私は,報告書を読むまで,すっかり忘れていて,原稿をまとめるにあたって,慌てて,過去の報告書を読み直したり,証券取引等監視委員会のサイトで検索したり,という感じでした。

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 不正な売上計上の詳細については,上記記事または調査報告書をお読みいただければと思いますが,支配株主との間で合同会社などを設立して不動産取引を繰り返して行い,その一部は循環取引であり,いわゆる関連当事者ととの取引の開示ができていなかったり,不正な売上計上により有価証券報告書の訂正が必要になったりという不正が野放しになっていたというのが,社外調査委員会の見立てです。その見立て自体に間違いはないかと思うのですが,当職がすごく疑問に思ったのは,前回の不正発覚時に調査に携わり,その後の再発防止策の履行を監視し続けてきたはずの弁護士資格を有する取締役監査等委員さんについて,調査報告書に何のコメントも記載されていない点でした。

 社外調査委員会は,過去の再発防止策が年月を経るごとに形骸化してきたことが,不正が繰り返された原因であると断じていますが,取締役監査等委員の立場から,何らかのコメントがあってもしかるべきではなかったかと考える次第です。調査委員会は,一般的に,現任の取締役等のヒアリング結果を記述しないことが多いですが,本来は反論を含めて,コメントを報告書に記載すべくであろうと,改めて考えました。

 社外調査委員会による報告書は大部なもので,体裁上しょうがないのですが。不正かどうかを判断する根拠として同じ文章が繰り返し引用されていて読みづらいかと思いますので,上記のProfession Journal誌の記事で概要を把握していただければ幸いです。