毎月連載させていただいておりますweb情報誌Profession Jouranal最新号が機能公開され,「会計不正調査報告書を読む」連載第139回が掲載されています。今回とりあげたのは,ネットオークション運営会社である株式会社オークファンが設置した特別調査委員会による調査報告書です。
同社幹部は,架空循環取引を含む複数の会計不正によって,売上予算を達成しようと画策したわけですが,「外部からの指摘」によって不正が発覚し,2億円近い特別損失を計上するに至った事案です。
報告書を読んでいてはじめに持った違和感は行為の主体が誰か,記述がないことです。売上を不正に計上して予算達成を図ったのは誰で,予算達成のプレッシャーを与え,不正な売上計上を誘引したのは誰で,こうした不正を防げなっかたのは誰なのか。報告書には「主語」がほとんどありませんでした。
さらに,特別調査委員会は,代表取締役社長と常勤監査役にヒアリングを実施したことを公開しているのですが,彼らのコメントは,報告書には見当たりません。
加えて,他の経営陣,とくに社外取締役と社外監査役にはヒアリングすら実施いていないようです。もちろん,ヒアリングを実施しなかった理由についての説明もありません。会計監査人についても同様です。
こうした結果,原因分析も表層的なものに陥ってしまい,そこから導かれる再発防止策の提言も通り一遍のものであると感じます。ということで,報告書としては,あまり読み応えのないものになってしまっています。
もちろん,こうした批判は特別調査委員会だけに向けられるものではなく,会社側がこうした報告書を望んだ結果であるということもできます。