「租税争訟レポート」をProfession Journal誌に寄稿しました。

 隔月で寄稿させていただいているweb情報誌Profession Journal誌の「租税争訟レポート」連載第66回が,昨日,公開されました。今回とりあげた裁決は,司法書士業を営む個人が,所得税と消費税を免れるために売上を減額して,税理士事務所職員に申告書を作成させた事案で,原処分庁は当然のように重加算税の賦課決定処分を課しましたが,これと不服として審査請求したものです。

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 この司法書士の方,なかなかすごいなぁと思うのは,自分は集計ミスなどをチェックしてもらったつもりだったのに,税理士事務所職員が勝手に売上を減額したものであるから,責任はないという趣旨の答述をしているところです。税理士やその事務所職員が独断で売上を減額して決算を締めるようなことはありえないことでして,濡れ衣を着せられた格好の税理士事務所職員も反論します。いわく,平成14年ころから繰り返し行われてきたとこと,毎年注意していたこと,このような減額をすることの責任は司法書士側にあることを説明してきたこと……。

 国税不服審判所は,当然の余蘊,請求人の審査請求を棄却しました。

 税理士として気になったのは,事務所職員を管理監督する立場の所長である税理士がどのように関与していたのか,裁決書には何も述べられていなかった点です。職員から報告を受けていなかったのか,報告を受けたうえで是認し,または放置していたのか。場合によっては税理士法違反に問われかねない事案であるだけに,このあたりの事実認定について裁決書に記述がないのはなぜなのかと。