「租税争訟レポート」をProfession Journal誌に寄稿しました。

 ほぼ隔月で連載している「租税争訟レポート」がProfession Journal誌最新号で公開されました。今回は,「税務相談と信義則」が争点となった裁決をとりあげました。

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 審査請求人は,被相続人である父から相続により取得した土地について,小規模宅地等の評価の特例を適用して相続税負担を軽減すべく,自らが経営する法人の顧問税理士に相談したところ,「適用不可」という回答を得ます。普通はここで諦めると思うのですが,審査請求人は所轄税務署で税務相談を行い,担当した税務署職員から「適用できる」との回答を引き出します。その回答を得るためにどういう情報を隠したかまでは,採決では触れられていませんが(職員が適用できるとした論拠が知りたかった),この回答に気をよくした審査請求人は特例の適用を受ける形で相続税の申告書を提出し,その後,所轄税務署から特例の適用がない形で更正処分を受けます。

 国税不服審判所は,税務相談とは,行政サービスの一環として,税務職員が、納税者の提示した資料及びその説明の範囲内で検討することにより、一定の見解を示したものにすぎず,信義則違反が問題となような公式見解ではないなどとして,審査請求を棄却する判断をします。裁決の詳細については,ぜひ,記事をお読みください。

 私たち税理士も,たとえば確定申告時期に,無料相談会で,納税者のみなさんからいろいろな相談を受けることが多くあります。相談時間の制約(おおむね30分)もあり,情報不足から,結論を申し上げられないことも少なくありません。そして,本件の審査請求人のように,他の税理士や税務署職員から「難しい」と言われた税務上の判断を,いわばセカンド・オピニオンのように求めてくる相談者も,ごくたまにではありますが,いらっしゃいます。もちろん,軽々に「できます」という判断をお示しすることはないようにしていますが,あらためて,税務相談時に確認する適用要件をきちんと整理しておくことの重要性を考えさせられる裁決でした。