税務弘報12月号に寄稿しました。

税務弘報2022年12月号

 税務弘報の2か月連続特集「税務は伝え方が100割」に寄稿しました。

 私のテーマは「延長申請すれば大丈夫すよ」という言葉の伝え方。実際にあった相続税の申告・納付期限の延長申請をもとに書きました。新型コロナウイルス感染症の影響を受けて延長申請をしたところ,所轄の税務署からは承認通知が届いているにもかかわらず,なぜか,延滞税の納付書が発行されてしまっという事案です。法定相続人のお一人は,新型コロナウイルスに感染した患者さんのために働く医療従事者で,延長申請が認められることは間違いないと思っていたのですが,承認されれば延滞税の納付は必要ないことを十分に伝えきれなかったために,相続人のご家族がコンビエンスストアで納付してしまい,過誤納金の還付まで1か月近くかかってしまいました。

 東京国税局管内は,業務センターが分離された影響かもしれませんが,税務署内での意思決定が,業務センターに伝わらずに,納付書や督促状が送付されるという事件が多くなっている気がします。今回,寄稿した事案もそうですが,ほかにも,

・経営者が新型コロナウイルスで自宅療養していたため,源泉税の納付が3日遅れることがわかったので,延長・納付申請をして,承認されたにもかかわらず,加算税の納付書が届き,税務署に抗議して,「破棄してください」となったはずなのに,さらに,後日,「督促状」が届いた事案

・消費税の納税義務がなくなったにもかかわらず,「中間申告の案内」が届いたので,所轄税務署に確認してもらい,その課税期間が免税事業者扱いであるにもかかわらず,中間申告による納付額について「督促状」が届いた事案

などを経験しています。いずれも,業務センター側での確認手続きに漏れがあったという説明でした。

 納税者(税理士)が間違った申告をした場合には,修正申告をしたり,取下げ書の提出をしたりすることが求められるわけですが,税務署長名での間違った納付書や督促状が発行された場合には,担当者が「電話」により「口頭」で形ばかりの謝罪をしただけで済ませるという,現行のシステムを改めないかぎり,こうした人的ミスは減らないのではないかと,個人的には思っています。業務センターの分離は,税務行政の効率化のためかもしれませんが,税務行政は国民のためにあるはずですから,納税者に効率化のしわ寄せがいってしまうようでは,本末転倒ではないかと,強く懸念しています。