「税務弘報」2022年5月号に寄稿しました。

 中央経済社さん発行の「税務弘報」2022年5月号に寄稿しました。今回,編集部からいただいたテーマは,昨年11月に粉飾決算が発覚し,特別調査委員会の調査を経て,結局,上場廃止となったグレイステクノロジー株式会社の事案から,顧問税理士として得られる「教訓」はないかというものです。

 このところ,「税務弘報」誌からのご依頼は,見開き2ページの短めのものが多かったので,8千字程度のまとまったものを寄稿させていただくには,ほぼ2年ぶりとなります。

 詳しくは,ぜひ,「税務弘報」5月号をご覧いただきたいのですが,当職の方で本件事案から得られる教訓としてとりあげたものをご紹介します。

1.売上計上基準は存在するか

2.売掛金の改修は期日通りに行われているか

3.内部統制システムが有効に機能しているか

4.経営トップの暴走を止める取締役・監査役はいるか

5.会計不正事例を知り,不正の端緒を発見する能力を高める

 グレイステクノロジー社の会計不正は,創業者で,代表取締役会長の松村幸治氏が2021年4月に逝去したことで,「不正をしてでも公表した予算を守れ!」と号令をかける経営トップがいなくなったことから,残った松村氏子飼いの業務執行取締役たちでは隠蔽しきれなくなって発覚したものでした。

 ただ,2021年3月期の売上高のうち約55%は架空売上でしたが,残念なことに,会計監査人である大手監査法人は粉飾に気づかず,無限定適正意見を出しています。2021年3月期に,グレイステクノロジー社は,M&Aで子会社化した会社があったことから連結決算に移行し,そのため,監査報酬も,2020年3月期の20,000千円から44,500千円へと増額されているようですが……。

 なお,グレイステクノロジー社の会計不正について附言しますと,不正の手口も不正を隠蔽するための工作も,過去の不正事案で見られたものばかりでした。