「税務争訟レポート」連載第60回が公開されました。

 隔月で連載を続けさせてもらっているProfession Journal誌の「租税争訟レポート」連載第60回が,本日,公開されました。隔月で60回ということは,ほぼ10年,連載を続けさせていただいていることになります。あらためて,お読みいただいているみなさま,編集部のみなさまに感謝いたします。

 今回とりあげた判決は,抜き打ちで行われようとした税務調査を拒否し続けた挙句,帳簿及び請求書の不提示を理由に,消費税の仕入税額控除を全額否認されて,38億円を超える消費税の納付をする羽目になった納税者が,顧問税理士を訴えたものです。

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 千葉地方裁判所は,原告の主張を全面的に認め,被告の義務違反行為によって原告に生じた損害は合計約38億円であり、その一部である3億円と弁護士費用2,000万円との合計3億2,000万円の支払を求める原告の請求は理由があるから,これを認容するという結論を述べました。

 判決文を読んでの感想は,やはり「消費税は怖い」というものでした。

 被告である顧問税理士は,国税通則法が改正される前に,事前通知がないことを理由に原告の税務調査を拒否した結果,税務調査そのものがなくなった経験を有していることが判決では述べられていますが,平成23年度12月の国税通則法改正で,第74条の10(事前通知を要しない場合)が明文規定となり,それまでの事前通知をめぐる税務調査問題に一応の解決を見ていることををどのように理解していたのか,疑問を感じます。

 どこかで,税務調査を受けるという方向に切り替えることができていれば,これだけ多額の追徴課税処分を受けるには至らなかったように思いました。