「租税争訟レポート」Profession Journal誌に寄稿しました。

 隔月で連載させていただいているProfession Journal誌「租税争訟レポート」連載第45回が,昨日,公開されました。今回のテーマは,相続税申告にあたって,申告財産から除外していた多額の現金について,修正申告をしたところ,重加算税が課された事案で,「隠ぺい又は仮装」が認定できるかどうか,というものです。

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 第一審である東京地方裁判所控訴審である東京高等裁判所ともに,納税者の行為は「隠ぺい又は仮装」に該当して,重加算税の賦課決定要件を満たすというもので,訴えは棄却されています。

 連載記事の中でも触れましたが,本事案,納税者は自主的に修正申告をしたものです。判決文からは詳らかではありませんが,相続人間で遺言内容をめぐるトラブルが生じて,他の相続人から被相続人の預金から多額の使途不明金が発生していることを追及された原告が,使途不明金はなく現金で保管していたことを認めることになり,その陳述と平仄を合わせる格好で,相続税の申告についても修正を行ったというのが筆者の推測ですが,正確なところはわかりません。

 本事案では,期限内申告書の作成を委任された税理士は,預金について残高証明書の提示を受けていたものの,相続開始前の入出金履歴については,通帳の提供などを受けないまま,申告書を作成していたようです。税理士としては,相続人のみなさんを疑うわけではないですが,念のため,被相続人に預金口座については,通帳が残っている限り入出金履歴を確認する必要があることを,再認識させられた判決でした。