「会計不正調査報告書を読む」をProfession Journal誌に寄稿しました。

 毎月連載を担当しているProfession Journal誌の「会計不正調査報告書を読む」の連載第151回が,2月15日(木)に公開されました。今回とりあげた調査報告書は,レンズメーカー「タムロン」社が設置した特別調査委員会による報告書です。

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 タムロン社が外部に委託している通報窓口に入った1件の通報を契機に,代表取締役社長による交際費の私的利用や社外の女性を帯同しての海外出張などが暴かれていきます。圧巻だったのは,調査委員会のインタビューに応じた先代社長(相談役)による,交際費の私的利用の正当化論でした。

 特別調査委員会は,そのコメントに次のように言及をしています。

社長については、社長業の重圧によるストレスを解消するためには、単独で飲みに行く、カラオケに行くなどしてストレスを発散する必要があり、そのための単独飲食費や同伴飲食費は会社の必要経費であるなどと真正面から正当化した。(中略)相談役としても、会社の経営に口出しをしたくてもそれを我慢することによるストレスがあり、それを発散する必要があると述べる有り様であった。

 なんともすごい自己正当化ですが,もしかしたら,現在,社長の地位にある方の中にも,程度の差こそあれ,同じような考えの人がいるかもしれません。とはいえ,調査委員会設置前に辞任した前代表取締役社長の報酬は126百万円(2022年12月期)であり,女性と飲食するお金に不自由する金額ではないはずで,相談役が社長だった時代から続いていたとはいえ,どこかで「止める」ことはできなかったのでしょうか。

 税理士としては,タムロン社が直面するであろう税務調査が気になるところであり,税務調査の前に申告内容を修正すべきであると思料するわけですが,公認会計士資格を有する社外取締役が参加している特別調査委員会は,税務申告をどうするかは,経営の意思決定事項であると指摘するにとどめて,積極的に過年度申告内容を修正することまでは求めていないのは,やや納得できない結論ではないかと考えます。

 ぜひ,記事本文をご一読ください。