「公表裁決事例平成31年1月~3月分」Profession Journal誌に寄稿しました。

 国税不服審判所が3か月ごとに公表している裁決事例について,いくつか興味深いものをとりあげる「速報解説」記事が,昨日,Profession Journa誌で公開されました。

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 公表裁決事例では,ほぼ必ず重加算税の賦課決定要件である「隠ぺい又は仮装」が争点となった事例がとりあげられているのですが,今回も,「隠ぺい又は仮装」が認定された事例と否認された事例がありましたので,両方について,裁決の概要をまとめてみました。

 今回,概要をまとめた3件の裁決のうち2件は,原処分庁による重加算税の賦課決定等の処分がすべて取り消されたものでした。裁決を読んでいて感じたことは,少し無理のある事実認定に基づき,課税処分ができるという仮説を採用してしまい,裏付けとなる関係者の答述などが不十分なまま,課税処分を行っているのではないかという懸念でした。たとえば,重加算税の賦課決定処分が取り消された「売上の計上漏れ」事案では,裁決を読む限り,1件しかない売上の計上漏れについて,通常の銀行振込ではなく,小切手による決済をさせ,売上の脱漏を行ったことが,「隠ぺい又は仮装」に当たると指摘しているわけですが,小切手を振り出した相手先従業員の話を聞いていれば,そうした課税処分には至らなかったであろうことが読み取れます。

 税務署の調査担当者も,限られた時間の中で適正な課税処分を行うために意を尽くしているとは思いますが,自らの仮説が間違っている可能性に対して,もう少し謙虚になる必要があるのではないかと感じました。

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