「租税争訟レポート」Profession Journal誌に寄稿しました。

 隔月で寄稿させていただいているProfession Journal誌の「租税争訟レポート」連載第44回が,昨日付で公表されました。

 今回とりあげたのは,税務調査によって重加算税の賦課決定を行った原処分庁の処分を,国税不服審判所が取り消したという事案です。

profession-net.com

 審査請求人の代表者は,個人名義のクレジットカードを利用して交際費等の精算を行い,これを会社の経費として処理していましたが,税務調査の際,調査担当者に事実とは異なる内容が記載されていた質問応答記録書への署名と捺印を求められ,これに応じてしまったことから,重加算税の賦課決定処分を受けることになりました。

 当初,裁決文を読み始めたときには,「個人名義のクレジットカードによる決済」そのものが問題になったのではないかと思い,それはおかしいのではないかと思って先を読んでいるうちに,代表者が,個人名義カードの利用は,「請求人の業務に関連するものではなく,個人で飲食等をした代金である」などと申述したことが問題であったことがわかり,決済手段による否認ではないことがわかった次第です。

 いくつか気になる点はあったのですが,ひとつめ,原処分庁は,代表者による質問応答記録書への署名捺印を得たことによって,実際にクレジットカードを使用した飲食店等に対する反面調査を行うことなしに,重加算税の賦課決定を行っています。さらに,再調査審理庁の担当者は,反面調査を行った結果,質問応答記録書の申述内容とは異なる事実が判明したにもかかわらず,再調査の請求を棄却する決定を出しています。

 どちらも,重加算税の賦課決定という重い処分を課すにあたって,処分行政庁としての慎重さが欠けていたのではないかという思いを禁じ得ないところです。

 本事案では,国税不服審判所の調査によって,質問御応答記録書の申述内容が否定され,重加算税を取り消す裁決が出されたことによって,納税者の救済がなされたことは良かったと思います。