「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 web情報誌Profession Journalに毎月連載中の「会計不正調査報告書を読む」連載第129回が,昨日,公開されました。今回は,北海道にスーパーマーケット・チェーンを展開する株式会社ダイイチの第三者委員会調査報告書をとりあげました。

 ダイイチ社の会計不正事案の一番の特徴は,「利益を先送りする」いわゆる「逆粉飾決算」を長年続けてきたという点です。翌期の第1四半期に販売予定の商品を先行して仕入れ計上したうえで,これを期末棚卸商品から除外して,売上原価を実際よりも多く計上,利益の圧縮を図っていました。

  第三者委員会の調査に対し,逆粉飾決算を始めた前社長は,株主に対して,右肩上がりの業績の推移を示すことにより経営の自由度を高める,すなわち、株主からの経営に対する干渉を排除したいという動機を説明しているようですが,第三者委員会は,これを「自己保身的な動機』であると指弾しています。この株主というのが,ダイイチ社の大株主である株式会社イトーヨーカ堂のことであるかどうかまで,調査報告書の直接の言明はありませんが,地方のスーパーが生き残りをかけて大手企業と資本・業務提携を行ったことで,かえって「経営の自由度」が損なわれていたという事情があるのかもしれません。

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 この報告書をとりあげた理由はもう一つあります。それは,公認会計士の宇澤亜弓先生と弁護士の熊谷真喜先生が久しぶりに会計不正の調査に従事されたという点です。今や東芝社外取締役に名を連ねる宇澤先生,このところ,あまり会計不正の調査報告書でお名前を拝見しておりませんでしたが,今回も,なかなか厳しいご意見が随所に述べられていたように思います。とくに,会計監査人にである監査法人はなぜこの会計不正に気づくことができなかったのかを説明するくだりは,ぜひ,公認会計士のみなさんにお読みいただきたいところです。

 このところ,会計不正事案の適時開示が増えていることから,編集部とご相談のうえ,「会計不正調査報告書を読む」の連載を当面の間,月2回とする予定です。

 ご期待ください。