証券取引等監視委員会「開示検査事例集(令和3事務年度)」の公表。

 証券取引等監視委員会は,8月31日付で,「開示検査委事例集(令和3事務年度)』を公表しました。ここ数年,7月中の公表となっていたので,今年は少し遅い印象です。

www.fsa.go.jp

 証券取引等監視委員会が,令和3事務年度(令和3年7月1日から令和4年6月30日まで)に課徴金納付命令勧告を出した事案は,計8件でした。最近4年間の推移をみると,10件→8件→9件→8件となっており,開示検査の着手件数は減少しているのですが,課徴金納付命令勧告数はほぼ横ばいといった印象です。

 いつも「会計不正調査報告書を読む」などの連載記事を掲載していただいている,Profession Journal誌にも,さっそく,解説記事を寄稿しました。

profession-net.com

 毎年のことですが,開示検査事例集では,企業名が特定できませんので,こちらの記事では,報道発表などを参考に,会社名気を明記した一覧表を掲載しています。ご興味のある事例がありましたら,ぜひ,ご一読ください。

 今回の開示検査事例集では,「監視委コラム」に新しい記事が一つ追記されました。

タイトルは,「内部統制やガバナンス体制は大丈夫ですか?」。そのコラムでは,

「経営陣のコンプライアンス意識の欠如や内部統制・内部管理体制の機能不全など」として,次のような背景・原因があるとしています。

    経営トップ主導のコンプライアンスを無視した業績至上主義の企業風土がまん延していたこと
    短期的な業績向上に注力するために個人の成果主義に依拠した経営体制であったこと等を背景として,十分な内部管理体制を構築できなかったこと
    経営陣が,リスク管理体制の脆弱性を認識しながら,その是正のための取組みを行ってこなかったこと
    担当者が行った業務を組織的にチェックする体制が欠如していたこと
    経理部門に会計処理の詳しい知見を有する者がいない中,経営幹部の会計基準等への理解不足により不適切な会計処理に至ったこと
    監査役及び内部監査室において不正リスクへの意識が希薄であったこと
    内部監査担当者が他部門と兼任していたり,内部監査規程が明確に規定されていないなど,内部統制,内部監査が機能不全であったこと
    取締役会等に出席しているものの,適切な指摘や質問を行っていないなど,監査役や社外監査役が機能不全だったこと
    会計監査人に会計処理の基礎となる十分な情報伝達がされていなかったこと

 いかがでしょうか?

 これはあの会社の事例だなとうなづけたり,こういう分析をしていたのかと思ったり,個人的には興味深いコラムであると感じた次第です。