「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 今月2回目の寄稿になる「会計不正調査報告書を読む」連載第130回が,本日,公開されました。今回とりあげさせてもらったのは,仮設ユニットハウスの製造・販売を手掛ける三協フロンテア株式会社が設置した調査委員会による調査報告書です。

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 三協フロンテアにおける不正発覚後の対応を推理してみますと,

 国税局による税務調査で不正が発覚

 → 顧問弁護士事務所主導で社内調査

 → 調査の過程でさらなる不正が発覚

 → 調査結果を適時開示するため,調査委員会を「独立性」「中立性」「客観性」を担保する組成にする必要がある

 → 元検事の弁護士を委員長に迎え入れて,外形を整える

という流れではないかと思います。

 調査委員会も,報告書の中で,「独立性」「中立性」「客観性」を保持するために,会社側と取り決めを行ったという記述があり,「顧問弁護士事務所主導の調査」にありがちな会社寄りの結論を導いたものではないことを橋梁しているように感じます。

 しかし,報告書を読む限り,会社から独立した第三者委員会による調査ではないがゆえに,少し,突っ込みが不足しているのではないかという点があり,今回の記事では,かなり批判的な解説となっています。

 もっとも違和感を持ったのは,調査委員会による「結語」部分でした。

 当社では、売上並びに粗利目標達成への拘泥から、営業部門上位者と一部の営業担当者間の信頼関係の希薄化、すなわち社内の分断を招いたことが、本件発生の主たる要因であった。

 主たる要因を「信頼関係の希薄化」「社内の分断」にあったと結論づけていますが,実は,「原因分析」の項目では,こうした表現は一切ありません。「売上高並びに粗利目標達成への拘泥」は,今回,三協フロンテアで発覚した不正類型のうち,原価の付け替えや売上高の先行計上の原因となっていることは否定しませんが,従業員によるキックバック(横領)という,最も悪質性の高い(刑事事件となる可能性のある)不正行為の原因に関する説明にはなっていません。この点のみならず,調査報告書全体を通して,従業員による横領という不正を断罪する姿勢に欠けていること,期をまたいた原価の付け替えや売上高の先行計上は有価証券報告書虚偽記載にもつながりかねない違法行為であることにほとんど触れられていないことなど,全般に,会社側に甘い報告書となっていることを指摘しておきたいと思います。