「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌の連載が公開されました。

 毎月寄稿させていただいているProfession Jounal誌の連載記事「会計不正調査報告書を読む」第123回が公開されています。今回は,旅行業界を揺るがせているGo To トラベル事業を巡る不正が発覚した旅工房社の外部調査委員会報告書をとりあげました。

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 本件,調査委員会の組成にまず大きな疑問を持ちました。社外監査役である弁護士がパートナーに就任している西村あさひ法律事務所の3人の弁護士だけで,外部調査委員会は組成されています。谷公房のリリースでは,「調査委員会は,調査の実効性と透明性を確保するため,当社と独立した外部の専門家である西村あさひ法律事務所の弁護士を構成員」とした旨,説明していますが,営業部門の不正行為を止められなかった社外監査役などの経営陣の責任を独立した立場でこおうりょできるかどうか,疑問だと感じました。

 調査報告書を読む過程で,旅工房社の有価証券報告書も確認しましたが,同社の2021年3月期の売上高が前期の約5%まで縮減(5%減益ではない)して,16億円に止まり,経常損失が13億円を超えているという窮地に陥っていることも衝撃でした。こうした状況をGo Toトラベル事業で打破しようと考えて,甘い誘いに乗った結果が,観光庁によるGo Toトラベル事業への参加停止処分となったわけですから,将来の業績回復に与える影響も大きいと言えるでしょう。