「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 今月2回目の寄稿になります。Profession Journal誌で連載をさせていただいている「会計不正調査報告書を読む」連載第137回は,年末に報告書が公表されて,「女性コンパニオンとの混浴」が一時話題となっていた株式会社TOKAIホールディングスの特別調査委員会による調査報告書をとりあげました。

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 報告書の一番の読みどころは,通商産業省(現:経済産業省)OBで長年,TOKAIホールディングスのトップに君臨してきた前社長を解職するために,社内取締役と社内監査役(要するに生え抜きの経営陣たちです)が画策するシーンです。企業を舞台にした小説を読むかのような緊迫感を,報告書はよく伝えていると思います。

 前社長の行為(ほとんどが私的費消を会社に払わせていたもの)はもちろん不正なものですし,「女性コンパニオンとの混浴」にしても品位を欠く行為であることは言うまでもありません。前社長が実力者であり,業績も新調させていることもあって,部下である社内取締役や社内監査役が何も言えなかったことは理解できるとしても,彼を諫める社外取締役や社外監査役がいなかったことが惜しまれます。社内取締役らも社外取締役らに不信の念を持っていた(前社長に情報が漏れるのではないかという疑念)ようで,コーポレート・ガバナンスが機能不全を起こしてしまった結果,クーデターのような社長解任劇につながってしまったのかもしれません。

 筆者は,「女性コンパニオンとの混浴」が報じられた記事を読んで,つい,バブルの頃の大蔵官僚に対する「ノーパンしゃぶしゃぶ接待」を思い出してしまいました。時代は平成を経て令和に代わっているというのに,男というものはあまり変わらないようです。もちろん,自戒をこめての感慨ですが。