「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 年明け最初の連載記事「会計不正調査報告書を読む」第94回が公開されました。3年前から続けている1年間の調査委員会設置状況をまとめる企画です。2019年に調査委員会設置を公表した会社は67社,設置された調査委員会の数は72でした。

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 2019年はとくに日本弁護士連合会の「第三者委員会ガイドライン」に準拠していることを明言している調査報告書が少なく,外形的には第三者委員会に見える委員構成であっても,「ガイドライン準拠」と書かれていないものが多くありました。

 一方,社外取締役・社外監査役+外部有識者という形態,または社内の調査委員+外部有識者という形態が非常に多くなっており,2018年26社に,2019年は24社がこうした委員構成を採用しています。

 ちょうど昨日は,公認不正検査士(CFE)の勉強会である東京不正検査研究会の1月期研究会が行われ,企業不正の調査を数多く手がけられている西村あさひ法律事務所の平尾覚弁護士から,「第三者委員会再考」というテーマで講演をいただきました。

 どちらかと言えば「ガイドライン」には批判的なお立場の平尾先生のお話からは,第三者委員会という日本独自の不正調査体制がなぜ重宝されているのか,ガイドラインの有する問題点など,ご自身の経験をもとに貴重なお話をお聞きすることができ,「会計不正調査報告書を読む」の脱稿前にこうしたお話を聞いていれば,もっと深みのある分析ができたかもしれないと反省しているところです。

 なお,小職の原稿の元データである「第三者委員会ドットコム」のサイトを集計すると,平尾先生は,昨年,スバル興業日立キャピタル,大豊工業,テーオーホールディングス,東洋インキSCホールディングスの5社で調査を担当されており,2019年,日本で最も多くの調査委員会の仕事を引き受けられた弁護士でありました。個人的には,2019年企業不正調査のMVPを授与させていただきたいと考えております。