「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 月に一度の連載を継続させていただいているProfesssion Journal誌の「会計不正調査報告書を読む」が,ついに連載100回を迎えることとなりました。最初の掲載は「創刊準備第2号」で2012年10月25日公開の「沖電気工業スペイン販社・不正会計事件」でした。あれから7年6か月以上,連載を続けさせていただいている編集部のみなさんにあらためて感謝したいと思います。

 今回は,株式会社ジャパンディスプレイ三者委員会調査報告書を取り上げました。横領事件で懲戒解雇となった経理部門の責任者が,自身が在職中に行った粉飾決算を通知する文書を会社に送付する――それだけでも,十分に刺激的ですが,それから間を置かずに通知した元社員が死体で発見され,自殺ではないかとの憶測がネットに流布してしまうといった,異常な事態の中,第三者委員会が設置され,調査が進みます。

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 調査報告書は本文だけで140ページに達しています。その理由は,元社員が通知をした会計不正が広範囲であり,かつ,長期間にわたっていることに基因しています。元社員が不正な会計処理として挙げた16項目のうち,第三者委員会が,明確に不適切ではないと認定した項目は4つに過ぎず,残りの12項目について,不適切な会計処理を認定しました。不正の手口については,Profession Journal誌の記事をぜひお読みください。

 報告書を読んでも理解できなかったのは,「会社の業績を良く見せて,CFOを助けたい」という動機を持って粉飾決算を行ってきた元社員が,その一方で,6億円近い資金と収入印紙を横領しているというのは,どういう心理状態によるものなのかということでいた。会社を支える,CFOを支えるという心理と,会社資金を横領して私腹を肥やすという心理が,元社員の中でどのように併存していたのか――元社員が既に死亡してしまっていることから,インタビューができなかった第三者委員会も分析できなかったというところでしょうか。