「租税争訟レポート」Profession Journal誌に寄稿しました。

 およそ隔月で連載を続けさせていただいている「租税争訟レポート」の連載第49回が,本日,Profession Journal誌で公開されました。今回とりあげた判決は,個人で事業所得を得ている納税者の必要経費該当性について,これを否認する判断を示した大阪地裁とその控訴審である大阪高裁のものです。

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 個人事業主である原告は,自身が営む事業に関する外注費として,原告自身が代表取締役を務める同族会社に発注を行い,さらに,同社から役員報酬を得ていました。処分行政庁は,税務調査において,この外注費は必要経費に該当しないとして更正処分を行ったため,訴訟に至ったものです。

 第一審である大阪地方裁判所は,事実認定の結果,所得税における必要経費該当性の認定基準として,

 それが事業活動と直接の関連性を有すること(関連性要件)

 事業の遂行上必要な支出であること(必要性要件)

という二つの要件を挙げたうえで,原告が,原告自身が代表取締役を務める同族会社に発注した外注費は,「必要性要件」を欠くことから,必要経費には該当しないという判断を示し,控訴審である大阪高等裁判所もこの判断を維持しました。

 判断のポイントについては,ぜひ,Profession Journal誌の記事をお読みいただきたいのですが,原告が代表取締役を務める同族会社の定款(事業目的)に,原告が営む事業や原告が同族会社に発注した業務が含まれていなかったという外形的な要素もあったように感じています。

 本件は,最高裁判所に上告受理申立てが行われているということで,まだ確定したわけではありませんが,個人事業主が自身のマネジメント会社を設立してそこから給与を得るという事業形態がとられている芸能人や作家など,会計業務を行う法人を設立して業務の一部を委託している税理士や公認会計士といった専門職についても,判決の射程に入ってくるものと思われ,影響が大きい判決ではないかと考えております。