「会計不正調査報告書を読む」Profession Journal誌に寄稿しました。

 毎月連載させていただいておりますProfession Journal誌の「会計不正調査報告書を読む」連載第116回が,昨日,公開されました。今回とりあげたのは,大阪市に本店を置く株式会社ショーエイコーポレーションの外部調査委員会調査報告書です。ますは「架空循環取引」に巻き込まれたというリリースを読んで注目していたのですが,報告書を読み進むにつれて,「架空循環取引に関する売上/売上原価の計上があったにも関わらず,過年度の決算修正をしない」ことに驚き,さらには,「売上/売上原価の戻し処理もしない」「当期において,未回収の売掛債権について貸倒引当金を計上する」という結論を導き出したということで,外部調査委員会はどういう理路でこの結論に至ったのかと,その分析を興味深く読み終えた次第です。

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外部調査委員会は、一連の架空循環取引について、

(1) 実質的当事者間における取引の有効性

(2) 第三者からショーエイに対する請求権の成否

という視点から、取引の法的な位置づけを検討して,個々の取引について実質的な当事者間でなお有効であると解するのが妥当であること,本件循環取引が不適切な取引であったことのみを理由として損害賠償請求権が生じるとは考え難く,第三者からショーエイに対する請求権は生じないと考えられることから,売上高/売上原価の取り消し処理をしないという結論に達したものです。

 こうした結論について,会計監査人がどういう意見を表明したかは不明ですが,有価証券報告書には無限定適正意見が記されていることから,同意したことは間違いないようです。

 ここからは筆者の推論(邪推に近いかもしれません)になりますが,我部調査委員会がこうした見解でまとまった理由の一つには,調査委員会を構成するメンバーが,公認会計士も含めて,全員同一の法律事務所(弁護士法人)に属していることがあったのではないかと思います(デジタル・フォレンジックを担当した会社も同じ弁護士法人グループに属しています)。結論に至るまでにどのような議論がなされたのかわからないなか,うがった見方で申し訳ないですが,複数の法律事務所/会計事務所で構成される委員会であれば,委員ごとの見解を明記したり,議論の過程を詳らかにしたりするか,あるいは両論併記のような報告書になったかもしれないと感じました。

 ぜひ,Profession Journal誌の記事もお読みください。