「租税争訟レポート」Profession Journal誌に寄稿しました。

 隔月で寄稿させていただいておりますProfession Journal誌の「租税争訟レポート」連載第56回が,昨日,公開されました。複数の大学で名誉教授の職にある審査請求人が,「救命救急医療等に関する専門技術・知識の教授又は指導等」といった講義を行うことで得た収入(こちらは給与所得として申告)とは別に,執筆で得た収入を事業所得としてして確定申告をしたところ,原処分庁は,執筆等ので得た収入は雑所得であるとして賦課決定処分を行ったため,審査請求を行った事案です。

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 「事業所得」か「雑所得」かという所得区分をめぐった争訟で必ず引用されるのが,最高裁判所昭和56年4月24日第二小法廷判決であり,本裁決でも,これを引用して,事業所得とは,「自己の計算と危険において独立して営まれ,営利性,有償性を有し,かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」であるという定義に基づき,審査請求人の請求を棄却する判断を下すわけですが,

審査請求人が興味深い主張をしているので,紹介しておきたいと思います。

 審査請求人は,大学等での講義で得た所得と執筆で得た所得は,契約形態は異なるものの,その内容はいずれも独立性を保持して行う専門技術・知識の教授業であって,両者は一体不可分・相互依存関係にあり,同一のものといえることに加えて,執筆活動には事業の性格を有するものが含まれていることに照らし,両者の業務を全体としてみるべきであると主張しました。

 こうした主張は,審判所によって,所得税法が,所得区分と所得ごとに所得の金額を計算する規定を定めている趣旨から,あっさり退けられるわけですが,その区分基準が必ずしも明確ではなく,最終的には,「社会通念」によって決定されるものであるとされる「事業該当性」もまた。日本型雇用慣行が崩壊しつつあり、雇用の流動化が進み、多様な働き方が容認される社会へと変容している現在の日本において、40年前の最高裁判所判決が有効に機能していると言えるのか、疑問を感じているところです。